過敏性腸症候群(IBS)を食事で改善する方法
おなかに痛みや不快感があり、下痢や便秘が数か月にわたり続く過敏性腸症候群(IBS)。いつもトイレのことを気にしなければならず、つらい思いをしている人も多い病気です。今回は、食事から過敏性腸症候群の改善が期待できる方法について紹介します。
過敏性腸症候群とは、腸に炎症や潰瘍などの異常が見られないにもかかわらず、慢性的に下痢や便秘、おなかのハリや痛みなどの症状が起こる病気です。精神的ストレスや自律神経の乱れが原因とされています。薬物療法や心理療法などでの治療もありますが、今回は食事療法にスポットを当てて説明していきます。
過敏性腸症候群(IBS)を食事で改善する方法と注意点
過敏性腸症候群の症状は、食事習慣に関係があることが分かっています。過敏性腸症候群の患者のうち、約6割は食事によって腹痛やガスによるおなかのハリなどの症状が悪化します[1]。暴飲暴食を避け、栄養バランスのよい食事を心がけるのはもちろん、以下のポイントをおさえましょう。
ヨーグルトなどに含まれるプロバイオティクスを摂る
テレビや雑誌などで「プロバイオティクス」という言葉を聞いたことのある方もいらっしゃると思います。これは腸内細菌のバランスを改善してくれる生きている菌(ビフィズス菌や乳酸菌など)や、それらを含む薬や食品のことをいいます。プロバイオティクスは、ヨーグルトや乳酸菌飲料に含まれており、手軽に摂ることができるのも魅力です。ただし「生きたまま腸に届ける」ことがポイントとなるので、胃酸や胆汁酸に強いものを選ぶとよいでしょう。
また、オリゴ糖や食物繊維などの「プレバイオティクス(胃腸で消化吸収されず、プロバイオティクスの働きを助ける物質)」を一緒に摂ると、腸内環境の維持や改善に期待ができます[1]。
低FODMAP ダイエット
過敏性腸症候群で悩んでいる人のなかには、プロバイオティクスやプレバイオティクスを試したけれど症状が改善しないという人もいます。そうした人たちに注目されている方法として「低FODMAPダイエット」があります。
ダイエットと聞くと、体重を減らすための運動や食事制限を連想するかもしれません。しかし、ここでいわれているダイエットとは、英語本来の「食事療法(食習慣)」という意味です。また、「FODMAP」とは以下の頭文字を示しており、ある種類の糖質を制限することにより症状の改善が期待できるというものです[2]
- F:fermentable(発酵性を持つ以下4つの糖質)
- O:oligosaccharides(オリゴ糖)・・・大豆や小豆、レンズ豆、小麦や大麦、ライ麦、パン・麺類などの小麦製品、玉ネギなど
- D:disaccharides(二糖類)・・・主に乳糖を多く含む牛乳や乳製品など
- M:monosaccharides(単糖類)・・・果糖を多く含む果物(リンゴやスイカ、桃、梨など)やドライフルーツ・ジュース、ハチミツなど
- A:and
- P: polyols(ポリオール)・・・キシリトールやソルビトールを多く含む食品、海藻、イモ類、マッシュルームなど
これらの糖類は小腸内で消化吸収されにくいために、大腸内で発酵し、ガスや下痢の原因となりやすいとされています。ただし、これらの食べ物がおなかに合う・合わないには個人差もあります。毎日何を食べて、おなかの調子がどうだったかをしばらく記録に付けてみると、過敏性腸症候群の症状を悪化させる食べ物の特定に役立つためおすすめです。
お酒の飲み過ぎ・タバコの吸い過ぎに注意
先にご紹介したとおり、アルコールの飲み過ぎは、過敏性腸症候群を悪化させるおそれがあります。タバコについては過敏性腸症候群の直接の原因とはされていないものの、感染性腸炎から過敏性腸症候群を発症した場合は悪影響となることがあります[1]。
いずれにしても、日々のストレス解消の手段としてお酒を飲み過ぎていたり、タバコを吸い過ぎている人は、他の気分転換方法をとり入れて改善することをおすすめします。
胃腸に負担のかかる食べ物は控える
消化に時間のかかる脂質(お肉などの脂の多い食べ物、揚げ物など油を多く使った料理)、繊維の硬い食材(たけのこ、きのこ、海藻など)、胃腸を刺激しやすいカフェイン含有量の多い飲み物(コーヒーや紅茶、濃い緑茶など)、炭酸飲料、香辛料をたくさん使った料理(胡椒、唐辛子、カレーなどの辛い食べ物)、酸味の強い食べ物(酢の物や柑橘系の果物)、濃い味付けの料理、加熱時間が短く硬さのある料理などは胃腸の負担となります[3]。こうした食べ物が原因で過敏性腸症候群が悪化する可能性がありますので、気をつけましょう。
症状がひどいときは食べないほうがよいですが、それほどひどくない場合でもこうした食材をなるべく避けるようにすることで、症状を和らげることにつながります。
食物繊維を積極的に摂る(便秘型の場合)
過敏性腸症候群は便の状態により下痢型・便秘型・混合型と分けられます。なかでも「便秘型」の方は、食物繊維を積極的に摂取することがすすめられています[2]。いも類や果物類、海藻類に多く含まれているので、便秘の症状に悩んでいる場合は積極的に摂りましょう。
まとめ
誰でも発症する可能性のある過敏性腸症候群。出勤途中や会議中などに腹痛の症状が起きたり、継続的に症状があることで日常生活に不自由が生じたりと、症状が改善するまではとてもつらいもの。今回紹介した方法を実践することで、自ら症状を改善できる可能性もあります。
決まった時間に食事をするなどの規則正しい生活を送ること、十分な睡眠をとること、身体と心を休める時間を作ること、ストレスをため込まないこと、適度な運動をすることなどで改善が期待できます[1]。これらを試してみても改善しない場合や症状が長く続くような場合は、食事療法ではなく薬物療法や心理療法を行なってみるのもよいかもしれません。
また、腹痛は他の病気が原因となって起こっている可能性もありますので、心配なときは病院を受診し相談・検査を行ってください。
参考文献
- [1]日本消化器病学会."機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-過敏性腸症候群(IBS)" 日本消化器病学会.https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/pdf/IBSGL2_re.pdf(参照2018-06-27)
- [2]日本消化器病学会ガイドライン. "過敏性腸症候群(IBS)ガイドQ&A" 日本消化器病学会ガイドライン. https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/ibs.html(参照2018-06-27)
- [3]東京都病院経営本部経営企画部総務課."食事療法のすすめ方 胃腸の調子が悪い時の食事" 東京都病院経営本部. http://www.byouin.metro.tokyo.jp/eiyou/kaiyou.html(参照2018-06-27)
「便秘・下痢」の関連情報
-
便秘・下痢
【 記事 】
-
便秘・下痢
-
便秘・下痢
【 記事 】
-
便秘・下痢
【 記事 】
-
便秘・下痢